「昔はもっと厳しい練習をしていた」としきりに選手に直接いう指導者がいます。

この言葉は、選手の負けず嫌いな性格を刺激して、やる気を促すという意図もあり、実際に意図通りの成果がでることも
あるかもしれませんが、本来は本心からそのような意図で用いている指導者は頻繁にこの言葉を言うのではなく、選手の
性格やタイミングを見て、あくまで選手主体のコミュニケーションの中で言葉を発しているように感じます。

反対に選手が、『いつも昔と比較ばかりされてうんざりするな』と感じるケースは、自分が指導している選手を昔と比較
する意図には下記のようなものが考えられます。

 

・コントロール欲求が強く、選手を自分主導でコントロールしたいと思っている。
これは、選手の意識を現実ではなく、過去という確認不可能な情報に向け、真実が検討できない中で指導者の中の過去に
準じさせるという効果が働く。

・指導者としての知識やコミュニケーション能力の不足を感じていて、実は自分の指導に不安がある。
過去へのこだわりは、裏返せば現実に対する情報や知恵の不足でもあり、自分以外確認できない過去を取り上げることで
状況を乗り越えようという意図である。

・自分しか知らない情報を中途半端に与えて、存在感を示したいと思っている。
情報を持っているということは人間関係で優位に働くため、自分の記憶という他者との共有が難しい情報を持ち出すこと
によって人間関係で優位に立とうというものである。

 

上記のような意図は、指導者が自覚していない場合が多いのですが、自覚が難しいからこそ私たちは無意識のうちに
使ってしまうコミュニケーションなのです。
特にスポーツでは指導者が選手や保護者、自分よりも立場が下の指導者に対して、ビジネスでは上司が部下に対してなど
上下関係の中で上のものが優位にことを運びたい時に、確認不能な過去という情報と現状を比較して、現状を変えさせよう
としてしまうのです。

しかし、本来スポーツでもビジネスでも、目的を共有してそれを達成するために信頼関係を築きながら取り組んでいくため
には公平性というものが重要で、この話の中で言うと情報の公平性が保たれていることが理想なのです。

 

指導者だけが知る過去ではなく、指導者も選手も確認可能な現在の状況、知識などの共有可能な情報をもとに話し合い
ながら取り組んでいくことが、目的達成の過程で信頼関係を積み重ねることにつながると思います。

昔という情報を持ち出してしまう背景にコントロール欲求がある以上、誰もが無意識で行ってしまいがちなことだからこそ、
無意識をコントロールする努力が指導者には必要です。
特に性格傾向としてコントロール欲求が高い人は、指導者になることが多いので無意識をコントロールする資質は指導者に
必要不可欠な資質だと思います。

 

次回は、無意識をコントロールするとはどういうことかについて書きたいと思います。

 

メンタル強化のためのメンタルトレーナーが作った練習日誌。

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