いつもモチベーションが高い選手は何を考えているのか?

モチベーションとは何かと考えた時、「やる気があるかどうか」と解釈してる人が多いのではないでしょうか?
アスリートの場合は、気持ちが前向きであることは競技継続に影響するので、このような側面があるのも確かです。
ただ、ここで見るべきなのは感情の強さではありません。
重要なのは、目標に向かって行動を続けられる心理的な土台があり、それによって支えられている意志力の継続としてモチベーションを捉えることです。

そして、その土台として考えられるのが心理的資本です。
心理的資本は、やる気そのものではなく、モチベーションを生み、維持し、失敗後に回復させる心理的資源として働くと考えられます。

心理的資本とは何か

モチベーションの土台となる心理的資本はどのようなものなのでしょうか。
それは、希望・自己効力感・レジリエンス・楽観性の4つの心理的資源を統合したポジティブ心理学の概念です。

スポーツに置き換えると、希望は「目標までの道筋を考える力」です。
自己効力感は「自分なら取り組める」という感覚です。
レジリエンスは、失敗・怪我・不調から再び戻ってくる力です。
楽観性は、現実を無視することではなく、今の苦しさを次の行動につなげる解釈の力です。

つまり心理的資本が高い選手は、目標達成に向けて、認知・感情・行動を立て直す資源を持っている選手だと考えられます。
この心理的資本が機能している時、モチベーションは高まり、維持されるのです。

モチベーションの低下と心理的資本の関係

モチベーションが低下した時には、「やる気がない」と評価されます。
アスリート自身も何らかの理由で一時的にやる気が低下していると、モチベーションが低下していると自分のことを評価しがちです。
しかし、それだけでモチベーションが低いと判断する必要はありません。

問題は、一時的なやる気の有無そのものではありません。
深刻なモチベーションの低下とは、目標への見通し、自分への信頼、失敗後の回復力、未来の捉え方が弱くなっている状態です。
心理的資本の4つの資源が機能していることは、モチベーションの安定を生むことであり、機能を失う時にモチベーションは低下するのです。

4つの心理資源がモチベーションを支える

モチベーションは、心理的資本の4つの資源によって支えられています。

希望がある選手は、目標までの道筋を探そうとします。
一つの方法がうまくいかなくても、「まだ別の方法がある」と考えやすくなります。

自己効力感がある選手は、課題に向かう力を持ちやすくなります。
「自分ならできる」という感覚は、挑戦意欲や練習への主体性に関係すると考えられます。

レジリエンスがある選手は、失敗で止まりにくくなります。
ミス、敗戦、怪我、不調があっても、再び練習に戻る選択を取りやすくなります。

楽観性がある選手は、結果を次の行動につなげやすくなります。
これは楽観的にごまかすことではなく、現実を見たうえで建設的に解釈する力です。

この4つが働くほど、アスリートは自分が競技をする意味を見出し、それをエネルギーに行動を継続しやすくなります。
反対に心理的資本が低いと、目標があっても「どうせ無理」「失敗したら終わり」「自分には才能がない」と解釈するため、モチベーションの維持も難しくなります。

モチベーションと自己決定理論

スポーツのモチベーションを考える上では、自己決定理論も重要です。
この理論では、質の高い動機づけには、自律性、有能感、関係性の充足が関係するとされています。

心理的資本と特に関係しやすいのは、有能感です。
心理的資本の中の自己効力感は、「自分は成長できる」「この課題に取り組める」という感覚に近いものです。

この感覚があると、選手は練習をやらされるものではなく、自分の成長につながるものとして捉えるので、主体的な挑戦や継続に結びつきやすくなります。
また、コーチの関わりも重要です。
自律性を支える関わりがあると、選手は自分で選び、自分で取り組んでいる感覚を持ちやすくなります。

心理的資本がバーンアウトから自分を守ってくれる

近年の研究では、心理的資本が高い選手ほど、挑戦的な目標を設定し、自分の成功可能性を信じやすいと説明されています。
また、試合前不安や状態自信に影響する過程で、心理的資本が一定の役割を持つ可能性も報告されています。
別の研究では、心理的資本がアスリート・バーンアウトを度合いを低くする対策の実践につながっていると言われています。

心理的資本は、不安の軽減、自信の維持、ストレス対処、燃え尽き予防にも関係する可能性があり、バーンアウトの影響を小さくするために働いていると考えられます。
競技レベル、指導環境、怪我、チーム内の人間関係、競技特性、大会の結果などの要因がバーンアウトを生むと言えますが、心理的資本はそこからの立ち直りにも影響している考えられます。

モチベーションは根性ではない

心理的資本は、根性論ではありません。
そしてモチベーション=根性ではありません。
モチベーションは、瞬間的な心の働きというよりは、一定期間の行動に影響する心理状態です。

根性は、どちらかというと瞬間的な負荷に対して対応するための心の働きで、モチベーションは現実を見た上で目標を見据える心の働きです。
方法を考え、自分の可能性を信じ、失敗後に立て直し、未来を建設的に捉える力です。
この違いを理解しておくことで、モチベーションの自己管理がしやすくなります。

モチベーションはどうやって高めるのか?

「モチベーションを高めたい」と思うことがあると思いますが、そう思うならモチベーションを直接上げようとする発想を手放す必要があります。
その代わりに、心理的資本を高めることに時間を費やすことが大切です。
なぜなら、4つの心理的資源が低いとモチベーションを高め、維持するエネルギーが生まれないからです。
適切な心理的資本の高め方を実践することで、モチベーションは高まり、安定します。

例えば、
目標が曖昧な選手には、結果目標だけでなく行動目標を設定します。
「勝つ」だけではなく、「序盤で足を止めない」「最初の一本を取りに行く」という形にします。

自己効力感が下がっている選手には、できた事実を具体的に確認します。
「頑張った」ではなく、「この場面で判断を変えられた」と行動単位で返します。

失敗を引きずる選手には、反省より先に復帰手順を作ります。
「何が悪かったか」だけでなく、「次に何をするか」を決めます。

悲観的になっている選手には、無理に励ますのではなく、次の一手を一緒に整理します。
未来を明るく語るより、行動可能な範囲を明確にすることが必要です。

上記のような4つの資源へのアプローチの成果は、それぞれが影響し合いモチベーションという大きな心のエネルギーとして機能するのです。

まとめ

モチベーションと心理的資本は、かなり関係が深いと言えます。
ただし、心理的資本はモチベーションそのものではなく、それを生み出して、支える土台と考えてください。

心理的資本が高い選手は、目標達成への見通しを持ちやすくなります。
自分の成長可能性を信じやすくなり、失敗しても立て直しやすくなります。

その結果、目標が達成できるという想像につながって、そこからモチベーションが生まれていくのです。
一時的な気分ではなく、思考力を成長させる取り組みと思考力によって見出した『意味』がモチベーションなのです。

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