プレッシャーに強い選手を見ると、「あの選手はメンタルが強い」と感じると思います。
しかし、心は目に見えないため具体的にどのような点が長けているのかわかりづらい。
スキルやフィジカルなら、目に見て違いが分かるので、真似をしたり、自分に合った方法を選択しようと決めることができるけど、メンタル面の特徴は目に見えないので、何をどう真似して良いのかわかりません。
ただ、何の手掛かりがないわけでもありません。
プレッシャーに強く、実力を発揮できる選手になるための答えは見つかっているのです。
今回の記事では、「メンタルが強い」と感じる選手が持っている心理的要素について説明します。
プレッシャーの中でも実力を出す選手が持っている心の力とは
スポーツの試合においてプレッシャーが掛るということは、ストレスを受けているということです。
人間の脳はストレスを受けると、ストレスに抵抗するか、もしくは回避しようという働きが生じます。
これらの働きは、良い悪いで評価するものではなく、試合の中でも瞬間的には必要な場合もあります。
例えば、相手の勢いに恐れない気持ちで対応する必要があることもあれば、リスクを負わない選択が必要なこともあります。
試合という戦いの場においては、脳の原始的な働きが重要なエネルギーであり、判断基準になります。
ただ、原始的な働きは、時に過剰な反応を見せることもあり、それだけに頼っていてはパフォーマンスの再現性は高まりません。
そこで戦うために必要な原始的な働きである闘争・逃走反応に心が振り回されないための力が必要となります。
その力とは、パフォーマンスの再現性を高め、実力発揮に導いてくれる『心理的資本』です。
プレッシャーに強い選手が持っている力『心理的資本』とは
心理的資本とは、アメリカの経営学者フレッド・ルーサンスらによって体系化された概念で、希望、自己効力感、心の回復力、楽観性の4要素から成ります。
これらはまとめてサイキャップとも呼ばれ、仕事のパフォーマンスや満足度との関連が報告されています。
競技に置き換えると、プレッシャーに強い選手は「緊張しない選手」ではありません。
緊張しても、目標への道筋を持ち、自分は遂行できると考え、ミスから戻り、次の展開を建設的に予測できる選手です。
問題は、プレッシャーそのものではありません。
問題は、プレッシャーを「危険」とだけ評価し、身体反応に飲まれて行動が早まったり、止まることです。
例えば、大事な場面で心拍が上がり、呼吸が浅くなることがあります。
低サイキャップの選手は、それを「まずい」「失敗する兆候」と受け取りやすいと考えられます。
一方で高サイキャップの選手は、「身体が準備している」と評価し直しやすい。
この差が、次の一手を出せるか、回避に向かうかを分けます。
目的達成のイメージを描く力
心理的資本が高い人は、目的達成の道筋を作る力を持っています。
この力を心理的資本では、希望と言っています。
この力は、目的達成のために複数のプランを準備しておき、プランAが崩れた時にプランBへ移るなどして、試合展開への柔軟な対応力につながります。
不利な試合展開になっても、そこから逆転することが多い選手は、この希望が高いと言えます。
プレッシャーの中で強みを見失わない心
ルーサンスの認知評価理論では、ストレス反応は出来事そのものではなく、その出来事をどう評価するかに左右されると説明されます。
一次評価では「これは脅威か」、二次評価では「自分は対処できるか」が問われます。
ここで自己効力感が低いと、「失敗したら終わりだ」という評価になりやすく、自己効力感が高いと、「難しいが、やれることはある」という評価に戻りやすい。
また、チャレンジ・スレット理論でも同じ構造が見えます。
自分の資源が課題を上回ると感じれば挑戦状態に入りやすく、課題が自分を上回ると感じれば脅威状態に入りやすいとされています。
挑戦状態では集中、判断、運動制御が保たれやすい。
脅威状態では過緊張、視野狭窄、判断ミスが増えやすい。
つまり心理的資本は、プレッシャーを消すものではありません。
プレッシャー下で「自分には使える資源がある」と認識するための土台です。
自己効力感は、最も直接的にプレッシャー耐性へ関係します。
PK、延長戦、逆転場面、決勝戦で「やれる」と思えることは、単なる気合いではありません。
それは注意を課題へ戻し、自分の中にある課題を攻略する根拠を確認する思考です。
自信があるから成功するのではなく、成功する要素を自分の中に見出せるから、思い切った行動に踏み切れるのです。
ミスを引きずらないための心の力
心の回復力は、ミス後に自分を取り戻す速さです。
トップ選手の特徴は、ミスをしないことではありません。
ミスの後に、自己否定へ沈まず、次のプレーへ戻ることです。
トップアスリートほど、ミスを引きずらない傾向があります。
サッカー日本代表の久保建英選手は、「試合中にミスをしたら、もう一度同じプレーを試みて、成功体験を得るようにしている」と言っていますが、心の回復力を支える具体的方法を持っているのです。
心の回復力はレジリエンスとも言われており、その研究でも、競技者のレジリエンスは逆境経験からの回復や競技継続に関わるものとして扱われています。
ポジティブな視点から評価する力
プレッシャーに強い選手は、物事をポジティブな視点から評価する力である楽観性も高いと言えます。
楽観性は、未来予測を安定させます。
ミスをした時に「次も失敗する」と考えると、身体は守りに入ります。
「修正すればいける」と考えられると、視線は次の課題へ戻ります。
セリグマンらの説明スタイル研究でも、出来事を悲観的な視点から説明するとパフォーマンスの低下する傾向にあると言われています。
楽観性を使って根拠のあるポジティブな評価をすることが、アスリートの実力発揮のために重要なのです。
心理的資本を手に入れる方法
結論として、プレッシャーに強い選手とは、緊張しない選手ではありません。
プレッシャーが掛るというストレス下でも、希望、自己効力感、心の回復力、楽観性を使い、自分を機能させ続けられる選手です。
そしてその選手が持っている心の力が心理的資本です。
フレッド・ルーサンスらの研究によって心理的資本は開発が可能だということが分かっています。
この心の力を高めることができるということです。
心理的資本は、思考力に影響を与える力でもあるので、これを高めるための有効な方法の1つはコーチングです。
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