「考えるな感じろ」という言葉を何かのきっかけで知って、スポーツをする時の心理状態を端的に表した言葉だなと思っていたのですが、どうもこの言葉はブルースリーの『燃えよドラゴン』という映画の中で言われていた言葉だそうです。
映画は見たことがないので、この言葉がどういう場面で使われたのかはわかりませんが、非常に分かりやすくスポーツをする時の理想的な心理状態を表していると感じています。
スポーツをしている時、目から入ってきた情報を脳で処理して、目の前のことにどう対処するかを脳が判断して動作が生まれるのですが、どうしても具体的に何をするかを頭の中で文章化しながら考えていると目の前の出来事への反応が遅れたり、間違ったりしてしまいます。
いい結果が出た時は、その時のことを具体的に覚えていないという体験をしたことがあると思いますが、これは脳内で文章化をしていないため、その瞬間にどう考えていたかという自覚がないからではないかと考えられます。
反対に負けた時のことはよく覚えているのは、脳内で文章化して何かを考えていたために、何を考えていたかという自覚がはっきりとあるからだと思います。
【感じる】という心理状態は、目の前の状況から次何が起きるのかを観察していたり、自分の体の位置やバランスを感じるセンサーが働いている状態であり、感じていることを具体的に文章化するのではなく、移り変わる状況に対して、常に自分の感性の焦点を合わせていることだと考えています。
先日、この考えるという状態と感じるという状態を意識的に使い分けることができているのか、脳波で見てみようと思い計測してみました。
それが下の図です。
図の上段が右脳の働きを示していて、下段が左脳の働きを示しています。
これは、剣道の一流選手が試合をしている動画を見ている時の脳波です。
緑の枠が、脳内で試合の内容や技の出し方などについて、あれこれと頭の中で文章化しながら見ている状態です。
別の言い方で言うと状況を論理的に捉えようとしている状態であるため、左脳の働きが活発です。
赤い線の振幅が大きいのが見てわかると思います。
それに対して、青色の枠内の赤い線の振幅は、緑の枠内に比べて小さくて形も安定しています。
この時は、脳内で感じていることを文章化して、その内容について深く考えるのではなく、常に目の前で起きている状況の変化に意識を向けて、次何が起きるかを予測しながら試合を見ています。
意識的に脳内で感じたことをあれこれ文章化して思考しないようにしようとしたら、それに伴い脳の活動も変化しました。
それも考えることを止めて、感じることを意識したらすぐに測定結果に反映されたのです。
これは、私たちが意識すればちゃんと脳の働きを変えることができるということを表しています。
脳の状態を変えようと意識するのではなく、意識を向ける対象と意識の仕方を変えようとしただけで脳は違う働きをしていたのです。
まだまだ脳波の勉強は必要ですが、これまで脳科学の理論をもとに考えていたメンタルトレーニングが目に見える形で脳の活動を変化させることは脳波で証明できているので、さらに実践で使える情報に進化させていきたいと思います。
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