実力はあるけど試合では発揮できない選手と試合になると実力以上の力を発揮したと感じたり、重要な場面で活躍する選手には、他人からの評価を気にしているかどうかという違いがあります。
これは多くのアスリートのコーチングをしていて顕著な違いだと感じている部分です。
実力のある選手は、その力を発揮した時は試合で結果を出しますが、「他人からどう評価されているか」ということに注意を奪われている時は、同じ選手とは思えないようなパフォーマンスになったり、勝負所でミスをしたり、相手の勢いに圧されてしまいます。
今回の記事では、なぜそうなるのかということを解説します。
他人の評価を気にすることで失われる感覚
他人の評価を気にするということは、注意力が本来向けるべき対象だけでなく、「他人からどう思われるのか」という点に分散されてしまいます。
それによって弱まり、失われていく感覚が内受容感覚と外受容感覚です。
アスリートの内受容感覚とパフォーマンスの関係
アスリートにとって内受容感覚とは、競技中に自分の身体内部で起きている変化を感じ取り、パフォーマンスの調整に活かす能力です。具体的に説明すると、心拍数や呼吸の変化、筋肉の緊張や力み、疲労感、身体の重さ、重心の位置、覚醒度などパフォーマンスに影響する体の状態を感じ取る能力です。
しかし、他者からの評価を強く意識すると、アスリートの注意は自分の身体から「周囲からどう見られているか」へと移りやすくなります。
例えば、試合中に「今、自分の身体はどういう状態なのか」ではなく、「このプレーを見ている人はどう思うだろう」「失敗したら評価が下がるのではないか」と考えるようになると、身体から送られてくる情報に十分な注意を向けられなくなります。
さらに、心拍の上昇や筋緊張といった本来はパフォーマンス調整に利用できる身体情報も、「緊張している=失敗するかもしれない」というように、他者評価を基準として解釈してしまうことがあります。
その結果、アスリートは自分の身体を感じながら自然に動くのではなく、「どう見られているか」を確認しながら自分の身体をコントロールしようとする状態に陥りやすくなります。
普段の練習で実力が出せている時は、自分の注意が自分の体で起きていることに向いているのなら、それができていない状態で同じようなパフォーマンスを発揮することは難しいと言えるでしょう。
アスリートの外受容感覚とパフォーマンスの関係
外受容感覚は、視覚・聴覚・触覚などを通して、外界の情報を捉える感覚です。
競技では本来、相手の身体の位置、ボールの速度や軌道、空間との距離、床・地面からの情報、音、相手の動きの微細な変化などを拾っています。
ところが「評価されている」という意識が強くなると、外界そのものではなく、「自分がどう見られているか」に注意が奪われてしまいます。
すると、相手や環境を知覚しているようでいて、実際には自分自身を第三者の視点から監視している状態になります。
このような状態になると動きがぎこちなくなる、注意が逸れる、判断が遅れるなどの問題が生じ、その結果本来のパフォーマンスとはかけ離れたものになってしまいます。
内受容感覚と外受容感覚の情報交換が妨げられる
アスリートが集中している状態は、内受容感覚と外受容感覚が無意識に情報交換を行って、望ましい選択をしようとしています。
その精度が高いほど、自分の能力がしっかりと発揮できたり、相手のパフォーマンスを上回ることができるのです。
しかし、自分の注意が他人からの評価に奪われてしまうと、内受容感覚と外受容感覚の情報交換が妨げられ、それがパフォーマンスのズレとして表れます。
そのような状態でも、実力差の大きな相手には勝つことができますが、実力の近い相手であればパフォーマンスのズレが致命的な敗因となってしまうでしょう。
「試合になると実力が発揮できない」「今はスランプかもしれない」と感じている選手は、このような状態に陥っている可能性があります。
元アスリートが語る一流選手と二流以下の選手の差
私が上記で説明している話を元アスリートがYouTubeで実体験として語っています。
西武、巨人で活躍して、引退後は西武、巨人でコーチ、楽天でコーチと監督まで勤められたデーブ大久保さんです。
上記の説明を読んだ上で動画を見ていただくと、アスリート視点の表現なので話の重要性を理解しやすいと思います。
実は、私はデーブさんとは親しくさせていただいていて、とてもサービス精神のある方なので動画では視聴者を楽しませようとされていると感じますが、本質的にはかなり重要なことを話されています。
デーブさんの表現では、一流は「どう思うか」という感覚で練習をすると言っていますが、一流選手は練習の時から自分の感覚と対話をしているから、試合でもその感覚は乱れにくいし、常に良い意味で自分を中心において環境の中に溶け込んでいるので、観客に対して「どう見せるか」という気持ちが持てるのだと思います。
ただ、動画の中では、デーブさんは自分を二流という立ち位置に置いて話をされていますが、現役時代のデーブさんは印象に残るプレーをされる方だったので、ここぞという場面では他人からの評価に注意を支配されることなく、自分の感覚を保ってプレーができる選手だったのではないかと思います。
他人の評価を気にせず、自分の感覚を保つための方法
自分が試合で力を発揮できない理由は、他人からの評価を気にして、内受容感覚と外受容感覚が損なわれているからかもしれないと感じた方は、コーチングを受けて自分の感覚と向き合う意識を身につけること、そしてそれを促すメンタルトレーニングを取り入れることをおすすめします。
他人の評価を気にするということは、それ自体に問題があるのではありません。
むしろ人間が社会生活を送る上で獲得した感覚でもあります。
しかし、時と場合によっては、その感覚をオフにしなければならない時があり、それがスポーツをはじめ自分のパフォーマンスを発揮する必要がある時、または自分のパフォーマンスを高めようとしている時です。
試合では、結果を出すために必要なことであり、練習でも自分と対話してパフォーマンスを高めていくために内受容感覚と外受容感覚を働かせることが必要なのです。
スポーツ以外なら、勉強と受験、音楽の練習と本番、仕事ならプレゼンの練習と本番なども同じです。
もしあなたがこの記事に書かれていることに該当していると思うなら、一度ご相談ください。
内受容感覚と外受容感覚を働かせないまま練習や試合を行うことは、競技人生が限られたものであることを考えると勿体ないと言えます。
アスリートとして必要な感覚を研ぎ澄ますためにサポートいたします。
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