コンプライアンス以上に大切なコントロール
各競技のスポーツチームや協会ではアスリートに向けてコンプライアンスについての研修を行っているのではないかと思います。
おそらくその中には性問題に関するものも含まれているでしょう。
しかし、性行動に関しては人間の生理的欲求が影響しているため、法令順守という視点からだけで抑止することは簡単ではありません。
欲求と行動の関係を学び、コントロールするための手段を手に入れておくことが必要になります。
私は、アスリートへのコーチングやメンタルトレーニングの指導を行っていますが、それとは別に性犯罪加害者の犯罪行動の抑止と更生のためのカウンセリングも行っています。
なぜ私が対象となる人も目的も違った心理的支援を行うことができるのかというと、脳科学を重視したアプローチを行っているからです。
脳のメカニズムという視点から見るとアプローチの裏付けとなる理論に共通するところが多いのです。
アスリートも社会人としてマナーを身につけることが求められますが、性行動に関するマナーを実践するという点においては脳のメカニズムから考えると法令順守という意識と欲求をコントロールする手段の両方が必要になると考えています。
アスリートに性行動に関する知識が必要な理由
アスリートは性欲が強いという印象を持っている人も少なくないと思いますが、そのような印象を持つことが多いのはアスリートの生活の中に性的欲求を高めやすい要素が多いからです。
全てのアスリートが性欲が高いとは言えませんが、アスリートの生活の中に性行動を求めたくなる要素が多いのは事実であるため、アスリートは自分の行動を管理するために以下のようなことを認識しておくことが大切です。
- アスリートは日頃から交感神経が優位になりテストステロンが増える
- 試合で興奮した交感神経の働きを治めるために副交感神経が優位となる性行動を求める
- 競技生活のストレスを発散するために性行動を求める
- 食事制限など禁欲を求められる反動で性欲を満たしたい気持ちになる
上記のような性行動につながる要素は、脳神経の働きが関係しています。
そのため性行動を求めたくなる要素が高まったとしても性行動を抑止する、もしくは適切な性行動を選択することができるようになるためには、脳がどのように働いているのか、それをどのようにコントロールすればいいのかを知っておくことが必要となります。
性行動のコントロールに関する取り組みは若いうちにすべき
人間の脳のメカニズムには、アスリートがプロや実業団選手という形で社会に出た時に性行動のコントロールに関する知識と手段を身につけておくべき理由が存在します。
その理由は、人間の脳の成長において理性、社会性、コミュニケーション能力などを司る前頭葉の発達が一番遅いということです。
人間の脳は、幼少期に後頭葉から発達が進んで前頭葉の発達が一番最後に完成するようになっています。
そのため子供から大人になっていく過程で性欲などは思春期に生殖活動ができるようになるために発達が進みますが、その時点では性欲をコントロールする前頭葉はまだまだ未発達ということが起こります。
前頭葉が十分な発達を迎えるのは25歳くらいと言われているので、早い内に競技の結果を出しているアスリートは周囲からの評価が集まり、金銭的にも余裕が生まれてきた時期に自分の欲求を制御する前頭葉はまだ成長段階にあるということが起きてしまうのです。
脳に悪い癖をつけないことが大切
前頭葉が十分に発達していない段階で過度な欲求の満たし方、不適切な欲求の満たし方を続けてしまうと、脳に欲求を満たす方法と欲求が満たされる体験の関係が強く刻まれて問題行動が癖づいてしまうのです。
このようなことにならないためにもアスリートは若いうちから前頭葉の未発達を補うために欲求のコントロールのための知識と手段を身につけておくことが必要なのです。
脳には可塑性と言って使った神経ほどよく発達するという性質があり、若いうちは競技力も伸びやすいのですが、不適切な欲求充足の行動も身につきやすいのです。
アスリートは、この可塑性という性質を良い方向に利用することが競技力の向上、選手生命の維持、そしてセカンドキャリアに向けた人間形成にもつながるので、若いうちに欲求によって行動のコントロールを失うようなことにならない対策を行っておくべきです。
アスリートに必要な欲求のコントロール法を身につける研修
スポーツチームなら新しい選手が入団したタイミングで、各競技の協会ならアスリートが18歳~20歳のうちに欲求をコントロールするための知識と方法を学ぶ研修を行うことをお勧めします。
知識は自分の心の状態を客観視するための心理的なフィルターになります。
自分の状態を知識と重ね合わせて分析することができるようになればどのような行動を選択することが望ましいかを考えることができるでしょう。
その上で欲求を押さえつつ適切な行動を選択できるようになるため、自分の中に生じた欲求を押さえる方法を持っておくと安心です。
知識と方法がアスリートが社会人として生活していくためのマナーのある行動の獲得につながります。
若いうちに欲求のコントロールに関する適切な研修を受けてより良い競技生活を送って頂きたい。
そして競技生活をその後のセカンドキャリアにつながる人間形成の時間にして欲しいと思っています。
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