なぜ、試合前の吐き気がするのか?

スポーツの試合で、自分の出番や試合前になると吐き気がする
という悩みを抱える選手がいます。

スポーツは楽しむことができるとストレス解消になりますが、
プロアスリートや強豪校の学生など、使命感や責任感を感じ、
強く勝ち負けを意識して競技をする人は、心にストレスが
掛かります。

このストレスが原因で怒る吐き気を『心因性嘔吐症』といい、
同じくストレスが原因の過呼吸を『過換気症候群』といい、
どちらもパニック障害の際に表れる症状です。

アスリートは、競技レベルが高いほど精神的にも肉体的にも厳しい練習を積み、ストレスに強いと思われているかも
しれませんが、パニック障害の場合はストレスだけでなく不安感や恐怖心も関係しているので、単純に厳しい環境で
競技に取り組んでいるからといってパニック障害にならないわけではありません。
むしろ生活を掛けてスポーツをしているプロアスリートの場合は、不安や恐怖を感じやすい環境であるとも言えます。

吐き気や過呼吸はもちろん、めまい、動悸、手足の震えなどもパニック障害の発作です。
極度の緊張感を味わう可能性のあるアスリートだからこそ、パニック障害になる可能性があるのです。

心が弱いからパニック障害になるのではない

試合前や自分の出番の前にパニック発作に襲われるという悩みを抱えた選手は、その事実を指導者やチームメイト
に打ち明けることが難しく、症状が小さいうちは隠してプレーをしている傾向があります。
その理由は、発作の置きはじめは、『自分でも何が起きているのかわからない』ということやパニック障害だと
判ってからは『ストレスによって発作がでているのは心が弱いからと思われたくない』ということを考えてしまう
からのようです。

しかし、パニック障害は心が弱いから起きるというものではありません。
プロ野球の小谷野栄一選手、サッカーの内田篤人選手などがパニック障害であったこと言われていますが、
決してお二人が心が弱いからパニック障害になっていたわけではないと考えられます。

強豪校で学校の伝統や名誉を背負って戦うこと、プロとなって自分の生活を掛けて戦うということは、かなり強い
ストレスが掛かってしまうことだと思います。
そのため、選手の中にはパニック発作が出てくるような人がいることが決して不思議なことではないのです。

パニック発作は脳の誤作動

そもそもパニック障害に該当するいくつかの発作は、人間の体の構造上は異常なことが起きているわけではありません。
人間の脳は、試合などの緊張する時には、自律神経から体にさまざまな命令を送ります。
筋力が上がるように体中に血液を送れ、体温を上昇させろ、心拍数を上げて呼吸も荒くしろという命令で戦う準備を
するのが緊張時の人間の体の自然な働きです。

パニック発作というのは、上記の自然な働きが過剰になったものなのです。
内臓の血液が減ることで消化器官の働きが低下して体から異物を出そうしたり、心臓がバクバクなって落ち着かなく
なったり、手足の先が震えてしまったり、などといった緊張時の身体反応の暴走がパニック発作なのです。

程度の差を抜きにすれば、スポーツで今から試合をするとなると誰の身体にも起きていることなので、パニック障害
の選手だけにが心が弱いために体に生じている反応ではないのです。
脳が体に過剰な命令を出してしまって、体が不必要な反応をしてしまったのがパニック発作なのです。

パニック障害を克服する方法

スポーツをしていてパニック発作が出るようになったら、早い段階で指導者や親に相談してスポーツ心理と精神医学
の知識を持つメンタルトレーナーに相談することです。

パニック障害は、予期不安といって同じことがまた起きるのではないかという思考が症状を再発させるという特徴が
あるので、周囲に隠した状態でパニック発作があることがバレたらどうしようと不安に思いながら競技をしていると
発作を引き起こす不安材料が小さくなりません。
周囲の人に知ってもらって、堂々と改善に取り組めるということが大切です。

パニック障害は、理由があって発作が生じているものなので、自己流で改善しようとするのではなく専門的な知識
を持った人にサポートを受けながら改善していくことが望ましいと言えます。

私は、有望な選手がパニック障害になり、それを隠して競技をしていることで選手生命が短くなってしまうのは
非常に残念なことだと思います。
正しい知識を得て、正しい取り組みで改善を目指すことが、本来のプレーを取り戻すためには必要なことですので、
もしパニック障害かもしれないと感じている人がいたら専門家に相談して下さい。

有名な選手でもパニック障害で悩んでいたのですから、おそらくスポーツ界にはパニック障害で悩んでいる人は
ある程度いるのではないかと思います。
パニック障害によって、貴重な才能が開花する機会を奪われる、好きなスポーツを続けられなくなるということ
が無くなっていかなくてはならないと思います。

コラムニスト
氏名 衣川竜也
職業 メンタルトレーナー
所属 株式会社AXIA

コラム&インタビュー一覧へ  トップページへ

contact6