アスリートに自覚してほしい競技生活における心の成長

真剣にスポーツをしてきた人は、『努力できる人』というイメージを持たれやすいと思いますが、多くのアスリートと会ってきた経験で感じていることは、努力してきたはずなのに自己評価が低く、「自分は競技しかできない」と思い込んでいる人も少なくないということです。
それはなぜなのか・・・?

それは競技のパフォーマンスとしては一定の自信はあっても、目に見えない心理的な能力については自覚することが難しいということが言えます。
また、勝負において勝ち続けることは難しく、競技生活を続けるほどどんな選手も多くの負けを経験するため、勝敗のみで自己価値を測ってしまうことが心理的な能力を適切に評価できていないということが考えられます。

私は、アスリートの競技面でのサポートを行うことが多いのですが、絶対に引退をする時はやってくるので、競技の成績だけでなく競技生活における心の成長に対する適切な自己評価をしてほしいと思っています。
そこに人間的な魅力があり、社会で求められる力があるので、引退を意識しているアスリートには自分は競技生活でどんな心の力を養ってきたのかという問いを自分に向けることを提案しています。

スポーツによって養われる心の力は、精神論ではなく再現可能な能力として扱えます。
だからこそ競技を離れてからの社会生活で意識的に活かすことができるのです。

この記事では、自分にはどんな心の力が養われていて、それをどうしゃかいのなかで活かせるかを考えてもらいやすいように、スポーツで養われる心の力を4つに分解して紹介しています。

スポーツによって養われる4つの力

スポーツによって身につく心理的な能力について、以下の4つを取り上げてみました。
これらがすべてというわけではありませんが、競技生活を継続する上でもセカンドキャリアで新しいことに挑戦する上でも、必要性をイメージしやすいと思うものを取り上げています。

・計画的に努力して目的に近づく力
・自分の弱点や課題を克服する力
・自分と他人の差を認める力
・苦難に挑む力

計画的に努力して目的に近づく力

目的を「実行可能な手順と順序」に分解して、限られた資源(時間・注意・体力)を配分して、再現性のある前進によって目的達成を目指す力です。
アスリートは競技説克の中で目的を持って創意工夫する習慣を持っているので、この力が身についていきます。

自分の弱点や課題を克服する力

上手くいかない時に自己嫌悪に囚われるのではなく、再発しがちな不具合(ミス・遅延・伝達不足など)を特定し、代替手順やスキル上書きによって再発を防ぎ個人のパフォーマンスを高めたり、組織を機能させる能力です。
アスリートは、目的達成を目指すほど弱点や課題と直面するので、その状況と真摯に向き合うことでこの力が身に付きます。

自分と他人の差を認める力

自分と他人の違いに気づいた時、そこに安易に優劣をつけるのではなく、目的達成を目指す上での『条件の違い』と捉えて、自分が目的を達成するための思考を妨げない力。
他人との違いを自覚した時に嫉妬や被害者意識に心が捉われてしまうと思考も歪んでしまうため、自分と他人の違いを素直に認める力が必要となります。

苦難に挑む力

スポーツを真剣に取り組むとさまざまな苦難に直面します。
その苦難は高難度、高不確実、高負荷に分解することができますが、これらに対する脅威評価を現実的に行い、挑み続けるという体験を競技生活の中では繰り返すことになります。
結果は出ていない時でも、苦難に挑み続けることで可能性を保ち続けることができます。

スポーツで得た心の力は自覚することで活かされる

アスリートは、目的を明確に意識して努力することができます。
現時点から目的の達成までの道のりが遠くても努力を積み重ねることができる精神力は、競技生活を続けていく上でも、セカンドキャリアで別の仕事をする上でも必要な力です。
特に真剣に競技に打ち込んが経験が多いほど、心の力を向上させる機会を得ていると思います。

ただ、力というものは自覚ができていないと活用できません。
心の力は、筋力や技術に比べて自覚することが難しいので、身につけていても自信を持てていない人は少なくないのです。
それが特に顕著に表れるのは、「自分はスポーツしかできない」「スポーツを辞めたら何ができるかわからない」という言葉です。

スポーツで得られた力は競技生活を続ける上でも、セカンドキャリアを歩む上でも必ず活かすことができるので、結果だけに目を向けるのではなく、結果を得る過程でどんな心の力が身についたのかという視点で自己評価をしてほしいと思います。

競技生活で成長し続けるために

スポーツは競技としてやっている以上、結果を求められるため試合に出ることができる人が限られ、自分になかなかチャンスが回ってこないことがあります。
しかし、その事実だけで自分を評価して自尊心を低下させないことが大切です。

なぜなら自分にチャンスが回ってきた時に自尊心が低すぎるとパフォーマンスが発揮できないからです。
なかなか試合に出ることができていなくても、日々の努力で培った力はあるはずです。
その力を自覚することでチャンスを活かすことができる可能性が高まります。

選手として競技生活を送れることは貴重な体験です。
選手であり続ける間は、結果を追い求めることは当然だと思いますが、結果以上に成長にこだわって自分の力を高めて欲しいと思います。
その力は必ず人生の大きな糧となるでしょう。

競技生活をセカンドキャリアにつなげるために

コーチングをしていると、アスリート自体がスポーツで自分の養った力が他の分野に活かせそうだと思っておらず、自分はスポーツしかできないというような自己認知を持っていることも少なくありません。
スポーツしかできないと思い込んでいる人は、そのスポーツの継続を支えた心理的要素を自覚してもらうように話をしていきます。
そうすることで、自分の養った力は他の分野でも活かせるのだと自己認識を改めてもらうのです。

体を動かすという観点からしかスポーツを捉えていなければ自分が競技生活で養った力は自覚しにくいと思いますが、スポーツを競技レベルで継続するということは心理的活動も活発な状態を継続しているということです。
そのため、競技生活では、さまざまな心理的な力が養え、それらは確実にスポーツ以外の分野で活かせる力として身についています。

セカンドキャリアへの移行に不安な方は、自分競技生活を見つめ直してみることをおすすめします。

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