生活習慣は選手生命に影響を与えるのか?
プロアスリートは、選手として競技を続けることで収入を得ていて、競技やそれに伴う活動だけで生活に必要な収入を得られる競技も以前よりも増えてきていると思います。
選手にとっては、出来るだけ長く競技で収入を得ることが続けられることが理想ですが、その長さは競技の実力だけでなくどんな生活習慣を身に付けるかが大きく影響していると思います。
プロアスリートとして現役生活を長く続けるためには実力が必要であることは言うまでもないことですが、プロになった時に実力だけで現役生活が続けられるわけではないので、実力を向上させたり、維持させるために生活習慣が重要であると言えます。
しかし、良い生活習慣を確立することは容易ではありません。
私が考える良い生活習慣を確立する理由が難しい理由は主に2つあります。
1つは、プロになるまでに競技一色の生活を指導者の管理のもと続けてきたという場合が多いので、競技を職業とする形で社会人となり生活の自由度が増えた時に、時間やお金の使い方などを含めどのように自己管理をして良いのかが分らない選手がいるという点です。
あまりにも指導者の管理が強すぎて自分で考えて学生としての競技生活を確立する余地が少なかった場合、自分がプロになれるだけの実力をつけることができたのは、どのような習慣のおかげかが分かりにくく、生活習慣を確立することに価値を感じにくい可能性があります。
もう1つは、収入が多い場合、生活の中にあるさまざまな誘惑に対して行動を起こせる金銭的余裕があるため生活が乱れやすいという点です。
人間はさまざまな欲求を持っており、欲に溺れ欲を満たすことが習慣化することは難しくありません。
それは、スポーツで努力して競争を勝ち抜いた結果、満たされる欲求というのは短期的かつ簡単に満たせるものではないので、競技者としてどのような生活を送るかということが重要になりますが、お金を掛けるだけで満たせる欲求は短期間で簡単に満たせるので、その欲求を満たすことに生活が支配されやすいのです。
それを依存症と言いますが、依存症によって生活が乱れ選手生命を短くしているアスリートは決して少なくないと思います。
目的意識とアスリートとしての満足度
プロになり結果を出すために一生懸命努力をしていた選手が、一定の結果を出して収入が上がってから私生活が派手になり、成績を落として復調できずに引退に追い込まれるということがあります。
一定の成績を継続して出せるようになるまでは周囲も認める努力家だった選手が、私生活が一変して選手生命を短くするようなことをしてしまうのはなぜでしょうか。
私は、その理由は選手が持っている目的意識と満足度、そして自己価値が関係していると考えています。
例えば、とりあえずプロになったことをある程度満足している選手が、自分はプロの世界で生き残るには人一倍努力が必要だと思い、やっとつかんだプロという立場を失いたくないからと必死に努力をしたとします。
そして、その結果チームの主力選手になり、収入もそれなりにもらえるようになった時、選手としての自分には満足してしまっていると、どうしても他の欲求を満たしたい気持ちが大きくなります。
なぜなら、人間は欲求を満たすことで得られる満足感を欲しているので、プロアスリートとしての自分に満足したからと言って、欲求を満たすこと自体を止めるわけではありません。
そのため、選手としての成功でお金を得ていると短期間で簡単に満たせる欲求を満たすような行動をとるようになるのです。
目的意識が努力を継続させる
人間には、食欲や性欲のような本能的な欲求、ある集団に帰属したい、他人から認められたい、他人を支配したいという社会的な欲求などがありますが、お金を得ることでそれらを一時的に満たしやすくなります。
そのため、そちらの欲求に行動が支配されがちになるのですが、それを止めてくれるのがアスリートとしての明確な目的意識です。
目的意識は、どのような目的を持っていて、そのためにどのような努力の継続が必要か、その努力を続けるとしたらどのような生活をする必要があるかということへの自覚です。
目的意識が明確であれば、おのずと今すべき行動も明確になるので、自分が持っている目的を達成したい欲求が強いほど、お金で満たすことができる欲求に行動を支配されにくくなります。
イチロー選手から感じる目的意識の重要性
例えば、良い例がイチロー選手です。
イチロー選手は、自分がどんな選手になりたいか、どんな選手であり続けたいかという思いが明確で強いことは、テレビでの発言などを聴いていても伝わってきます。
目的意識がしっかりしているからこそ、その目的に対して理にかなった行動を継続することができているのだと思います。
プロ野球の世界でも、選手生活の中で目的意識が弱くなってしまう選手がいると思います。
そんな時は、短絡的な欲求に行動が支配されやすい時で、生活習慣が乱れてしまう可能性があります。
おそらくイチロー選手は常に自分に問い掛け、自分の目的意識の明確さを保っているのではないかと思います。
それによって、長く実力を維持、向上させているのではないでしょうか。
プロアスリートは金銭感覚を磨くべき
プロアスリートは、若いうちから多くのお金を得る可能性もあります。
競技によっては、知名度が広がるほどの活躍をする選手でなくてもサラリーマンの平均年収を優に超える収入を得ています。
そのため、しっかりとした金銭感覚を持っておくことが、競技力を向上させる生活習慣の確立に繋がります。
上記で説明したように、人間は程度に個人差はあっても本能的な欲求、社会的な欲求を持っているので、そのような欲求があり、それがお金があることで短絡的に満たされてしまうからこそ生活が乱れることがあるということを理解して金銭感覚を養っておく必要があると思うのです。
投資、消費、空費、浪費
私がアスリートはもちろん、社会人になったらすぐに身に付けておいた方が良い金銭感覚は、自分がお金を使う時に、それは投資、消費、空費、浪費のどれにあたるのかを考えられる感覚です。
投資、消費、空費、浪費についての説明は以下の通りです。
投資
投資は、現在の自分の資産を増やすためにお金を使うことです。
一般的に投資というと、株式や不動産などを買って、買った物の価値が上がることで自分の資産を増やすことを言いますが、アスリートにとっての資産はお金だけでなく、自分の体の健康や選手のしての能力です。
そのため、心身のケア、実力が向上するためのトレーニングにお金を使うこと投資にあたります。
また、セカンドキャリアを視野に入れて勉強をすること、人脈を築くことなども投資にあたります。
投資は、内容によっては損をするものもあるので良く学び、リスクを承知した上でバランスよく行うことも社会人として必要なことです。
消費
消費は、自分が生きるために必要なことにお金を使うことで、食事をしたり服を買う、家賃を払うなどは消費にあたります。
消費は、生きるためには必要な支出なので、支出の中で一番額が多くなりますが、内容を見直すことで抑えることもできるので、消費をコントロールできる力は社会人にとって必要な能力です。
空費
空費は、心をリラックスさせたり、ストレスを発散させたりと気分転換をするために必要な支出ですが、どうしても必要な支出ではなく、時と場合によっては必要なものです。
内容によっては投資に近い価値のある支出になる場合もありますが、時には浪費に近い無駄な支出になることもあります。
浪費
浪費は無駄な支出、無駄遣いのことを言います。
使ったお金に対して得られる価値が少なく、特に必要でもない支出が浪費です。
上記のような支出の違いを理解してお金を使うという金銭感覚が、多くのお金を得るが引退という生活が激変する職業であるプロアスリートには必要なのです。
参考までに、月々の支出の中で、投資、消費、空費、浪費がどのような割合が望ましいかをお伝えしておきます。
得られる収入から貯蓄分を除き、支出しているお金が下記のような割合になっていますか?
投資25%、消費70%、浪費5%
※空費は条件次第で、3つのどれにも当てはまるので3つの支出の割合を算出してみて下さい。
上記の比べて浪費が多い人は、もっと貯蓄ができるかもしれませんし、浪費が多くて投資をしていない人は浪費を投資に回した方が良いかもしれません。
アスリートにとっての投資と浪費
私は、アスリートが良い服を着たり、良い車に乗ったり、美味しいものを食べたりということはある程度は投資になるのではないかと思っています。
一般的な社会人よりも多くの収入が得られる分、それが続く保障は少なくて、その保障が勝敗によって左右されるため、常に勝ち負けを意識しながら自己研鑽をしていくにはモチベーションの維持が必要です。
そのため、支出によって得られる効果がモチベーションの維持であるならば、その支出は投資にあたると思います。
しかし、モチベーションの維持のために行う行為から得られる満足感に囚われてしまい、節度を見失ってしまうと同じ行動による支出でも浪費になってしまいます。
収入が多くなるほど使えるお金がお送りますが、自分の支出が何にあたるのか、割合は適正かを考えられる金銭感覚を養っておかないとお金に心と行動が振り回されることになるので、プロとして選手生活を送る人にはしっかりとした金銭感覚を身につ行けて頂くことが必要だと思います。
アスリートの生活習慣の確立と自分に問い掛ける力
どのような職業でもある程度は目的意識が必要ですが、特にアスリートの場合は目的意識が必要な職業だと思います。
常に自分がアスリートとして何を目指しているのか、何を求めているのかを自分に問い掛け、問い掛けから生まれた答えを自覚して、目的意識に準じた行動を継続することで自分を見失わないようにすることが選手生活を充実されるためには必要だと思います。
人間には、長期的で努力の継続によって得られる満足感とお金があれば短期的に簡単に満たすことができる満足感があり、自分の本心は何を求めているのかを良く問いかけていないと後者の満足感を得ることに生活が支配されてしまいます。
そうならないためにも自分に問い掛けて、アスリートとしての本心を大切にした生活を送って頂くことが大切だと思っています。
私が行っているアスリートのためのコーチングは、アスリートに目的意識を持って競技生活送っていただくためのサポートです。
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