桑田さんの実験から感じられる非反復練習がもたらす効果
ピッチャーにとって走り込みは必要かという議論がありますが、走り込みが制球力向上につながるのではないかと推測される面白い話があります。
現ジャイアンツ2軍監督の桑田さんは走り込みの必要だと言われていますが、ある実験で桑田さんと数人のピッチャーのピッチングフォームの再現性を調べた時、リリースポイントに一番ばらつきが大きかったのが桑田さんだったんです。
しかし、その時投げたボールのコントロールは一番良かったのも桑田さんでした。
この事実が何を表しているのかというと、ピッチングの際に足を踏み込んだ時、マウンドの状態によってばらつきが生じる重心の移動を脳が察知して無意識にリリースポイントを変えることでボールを狙ったところに投げていたということです。
マウンドは、何度も投げ込んでいるうちに土の状態は微妙に変化していき、ピッチングの際に踏み込んだ時の重心移動にも影響が生じます。
この際の微調整として桑田さんは無意識にリリースポイントを変えているのですが、足の裏が地面についた時に体全体の傾きや動きを察知して調整する能力がランニングで身についたのではないかと思っているのです。
ランニングは、片足で地面を捉え前進していくので、入っている最中に脳が体の傾きを察知して動きを無自覚で修正して安定した走りを実現していると思いす。
同じようにランニングが重要だと言っている上原さんも制球力が高いことで有名ですが、桑田さんも上原さんも走り込みを続ける中で繰り返される脳の重心の微調整が、ピッチングの時にも行われるようになっているのではないかと思います。
脳の神経可塑性を活かしたパフォーマンスを向上させる方法
ランニング以外でも同様の能力を身につけることはできるように思うので、上記の考察が正しかったとしてもランニングは必ずしもやるべきトレーニングだと断言はできませんが、この話はアスリートのパフォーマンスを高めるための重要な手掛かりとなると思っています。
上記の内容を脳科学の観点から解説すると、走るという行為は片足で地面を捉えて足を交互に踏み込みながら前進していくため、片足をついた瞬間に脳が体の動きを微調整して可能か限り安定を保とうとする力が働きます。
走り続ける以上は、不安定さを修正する脳の働きが生じ続けるので神経可塑性という「使った神経の働きは強化される」性質によって片足を踏み込んだ時の重心移動とその先のパフォーマンスの調整力が強化されいくと考えられます。
ランニングのように、一見反復練習に見えても脳が受ける刺激がランダムであれば脳には非反復練習をしているということになり、反復させないという負荷がパフォーマンスの向上につながるのです。
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