フロー状態を目指すメンタルトレーニング
メンタルトレーニングは、今に意識を向け続けるためのトレーニングであるというのが私の考えであり、今に意識を向け続けている状態をフロー状態と言います。
メンタルトレーニングによってフロー状態になることができるのであれば、人間は自分の意志によってフロー状態を作り出せるということになりますが、実際はそう簡単なものではありません。
メンタルトレーナーとしてアスリートをサポートしてきた経験からも、こうすれば絶対にフロー状態になれると断言できるものではないと思っています。
しかし、私はフロー状態というものを目指してメンタルトレーニングを行うことはとても重要だと思っています。
それは、目的を明確化しないと自分の取り組んでいることのメリットを感じられないということと、自分の行っていることが上手くいっているとわからないからです。
フロー状態の実体験と持続することの難しさ
メンタルトレーニングにより、今に意識を向けている状態を作り出し、その感覚を感じてもらう。
その感覚が維持できている時、これが本当の集中力なのかと思うような体験をすることができます。
その状態をフロー状態であると考えるのなら、メンタルトレーニングではフロー状態の入り口に立つということは十分にできるというのが私の見解です。
ただ、フロー状態は、今に意識を向けていることが継続している状態なので、継続が途切れた後にまた意識を今に戻すことができてもそれはフロー状態ではありません。
これは、剣道の試合における私自身の体験なのですが、今に意識を向けるということ自体はメンタルトレーナーですのですぐにできるのですが、これを試合中維持し続けることがちょっとしたきっかけ
で崩れた話をしたいと思います。
剣道の試合で感じたフロー状態とそれが途切れた理由
先日、剣道の都道府県対抗という全国大会の大阪府予選に出場しました。
1回戦の対戦相手が去年と同じ人で、去年は2本取って勝つことができました。
相手の方は、刑務官で長く試合に出ておられる方で、まっすぐしっかりとした剣道で去年の勝ちが私としては出来過ぎの内容でした。
しかし、その時はいい感じで思考が働かず、感覚だけで相手の動きに反応できている実感がありました。
今年もその感覚を持って試合に挑もうと、試合前に今に意識を向けるためのルーティンを行い、実際に試合の前半はその感覚が保てていることも感じることができていました。
試合も自分では少し押し気味で進められているような感覚もありました。
ただ、その感覚が最初に途切れたのは、私が逆胴(相手の胴の左側を打つ)を打ち、一本である手ごたえを感じた後に旗が上がらずに勝負を決められなかったあと、決まってほしかったという思いが生まれた時でした。
集中力が切れたというほどではなかったのですが、試合が始まったころとは違った感覚になりました。
その後、その感覚からまた意識を今に向け直せたのですが、その後そろそろ勝負に出ようと考えた時に去年決めた面返し胴(相手の面を受けてから胴)を思い出しました。
そして、胴を狙うためによく相手の動きを見て打とうとして、狙い通り面が来て胴を返しました。
しかし、反応が少し遅れて相手の面を受けきれずに相手の面が有効打突となり負けてしまいました。
最後は、しっかりと面を打たれたので胴を打ったとはいえ、負けたということはわかりました。
私は胴を打つ時、相手の竹刀をよく見ようとしてしまったのですが、視点をおく範囲を狭くしてものを見ようとすると思考が働き過ぎて反応にブレーキが掛かってしまいます。
去年胴を決めた時は、狙ってはいたものの竹刀に視線を向けすぎることはなかったのですが、今回は竹刀をよく見ようとしてしまいました。
意識が、去年という過去に囚われてよく見れば面を胴に返せると思ったことと、竹刀をよく見てしまったことで目の使い方が周辺視から中心視になって動きが固まってしまったことが敗因でした。
メンタルトレーニングでフロー状態の維持を目指す
私の体験のように、惜しかった技を悔いて少し前の過去に囚われたとこ、試合を早く決めたいと思い未来に意識を向けたこと、1年前の過去に囚われたこと、そして体の動きが低下する目の使い方になったことなど、意識の状態を遮る要因が試合中に生まれてしまうと今に集中し続けられないのでフロー状態は生まれません。
フロー状態の入り口に立つことは、メンタルトレーニングによって可能だと思いますが、試合中の変化に心を囚われないようになってこそフロー状態を生み出すことができるのではないかと思います。
試合中の心理を振り返り、同じような思考にならないように訓練することはフロー状態を生み出す可能性を高めるのではと感じていますが、試合中は不確定要素も多いため、自分の意思だけではフロー状態を生み出すことは難しいでしょう。
そのため、試合には自分のコントロールできることだけをしっかりコントロールしようという意識で臨み、それを実行する中で他の要素も加わって本当にフロー状態というものが生まれるのだと思います。
フロー状態に入るための準備や方法というものはあり、慣れてくるとフロー状態という感覚を短い時間なら維持できるようになります。
メンタルトレーニングでは、フロー状態を長く維持できること、そして途切れても戻せるようになることを目指します。
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