イップスとは
イップスは、スポーツである目的を持って体を動かそうとしているのに、その意思通りに体が動かずにその選手の本来のパフォーマンスとはかけ離れたパフォーマンスになってしまう状態のことを言います。
野球なら、ピッチャーの投球時、キャッチャーのピッチャーへの返球時、内野手の送球時にボールが抜けたり、ワンバンドを投げてしまう。
テニスや卓球ならサーブの時にボールのトスが真上に上がらなくなり、レシーブの際には打ったボールが浮いてしまう。
ゴルフならスイングが途中で止まるなど、さまざまな競技でイップスで悩んでいる選手がいます。
イップスになりやすいプレー
イップスになりやすいプレーは、ズバリ【考える時間の余裕があるプレー】です。
例を挙げると、
野球なら、ピッチャーの投球、キャッチャーの返球、余裕を持ってアウトにできる打球を処理した後の送球などです。
テニスや卓球は、サーブ、そして余裕を持って返せる打球のレシーブ、ゴルフはスイング全般です。
ボーリングやダーツもイップスになりやすい競技の1つです。
上記のプレーの特徴は、考えるための時間があり、その中で『失敗したらどうしよう』、『また同じようなことをしてしまわないか』と不安に思い、そのプレーをイメージ化する時間があるということです。
人間の動作は、イメージを手掛かりに行っているので、思考をイメージ化する余裕のある時間のあるプレーほどイップスの症状が出やすいのです。
反対に野球なら、強い打球を受けて1類などに送球する場合は、すぐに送球しないとアウトにできないので、イップスになっている選手でも症状が出ないこともあります。
同じようにテニスや卓球で強い打球を打ち返す時には、症状が出にくいのです。
イップスを生み出すイメージ
人間の動作は、イメージを手掛かりに行っていると説明しましたが、イップスの症状が出ている時にはそのプレーが出てほしくないと強く願ってプレーしています。
『暴投しないように気を付けよう』、『もう失敗したくない』という思いや『また失敗しないだろうか』という願望でボールを投げたり、打ったりしています。
実は、この思考がイップスにつながるイメージを作り出してしまうのです。
人間の脳とイメージの作られ方
私たちは、脳内で生み出したイメージを手掛かりとして動作を起こす時に、具体的にどう体を動かすのか、どういう結果を生み出すのかをイメージしています。
しかし、イップスの場合は、暴投したくない、打ち損じたくないという願望を持って、それをイメージ化しいます。
この違いは何かというと、人間の脳の願いや思考を文章化して、それをもとにイメージを作るのですが、イメージを作る脳の部位は文章を正確に理解することができないのです。
そのため、『暴投したくない』という願いは暴投しているイメージを生み、『打ち損じたくない』という願いは打ち損じているイメージを生み出してしまいます。
そしてイメージ通りに体を動かしてしまうのです。
そのため、イップスを改善するためには、起きてほしくないことを願うのではなく、自分が何をするのか具体的に思考することが必要で、『~する』という意思をもとにイメージを作る癖を脳に付ける必要があります。
イップスを生み出す感情
次は、イップスを生み出している感情について説明します。
上記では、イップスの時は望んでいないプレーをイメージ化してしまっていると説明しましたが、ネガティブなイメージを生み出してしまうのは不安や恐怖といった感情があるからです。
イップスは、最初は一度のミスをきっかけに生じ始めます。
例えば、一度暴投したとして、その時はイップスの症状が原因ではなく、プレーのミスとして生まれた暴投であったとしても、次も同じ暴投をしないだろうかという不安、デットボールを当てたらどうしようという恐怖が生まれた時、人間の脳は不安や恐怖に対する対処を筋肉にさせようという命令が無意識に発せられます。
しかし、ボールを投げる、打つという動作は、本来自分を守るという動作ではなく、腕を伸ばしてボールやラケットなどを対象に運ぶ動作なので、その動作に反して不安や恐怖に対する筋肉の反応が生まれると、投げる、打つという目的に対して相応しくない動きになってしまいます。
それは不安や恐怖に対する筋肉の反応が、腕を収縮させて自分の脳や心臓を守ろうというガードの動きだからです。
想像してみて下さい。
ボールを投げる動作の中に自分の脳や心臓を守ろうというボクシングのガードのような筋肉の動きが生じて、その状態でボールを投げるとしたらどうなるでしょう。
まず、スローイング動作の途中で、感じの上がりにくさを感じ、手首の硬さを感じて、そのまま体の回転で無理やりボールを投げに行くので、ボールは外側に抜けていきます。
次に、ボールが抜けないようにしっかり握って投げようとすると、次はワンバウンドの暴投を投げてしまうということになります。
同じような筋肉の働きがテニスや卓球、ゴルフでも生じた時、それぞれの競技特有のイップスの症状が出るのです。
イップスを改善するメンタルトレーニング
イメージのコントロール
イップスの改善のために行っていることの1つは、イメージをコントロールできるようにイメージが生まれる仕組みを理解していただき、具体的にどういうイメージを持つことがいいかを知り、そのイメージを作ることができるようにするというトレーニングです。
人間は2つのことを同時にイメージすることはできないので、イップスの症状が出るイメージを別のイメージで脳から追い出せるようになる必要があります。
感情と筋肉の反応コントロール
不安や恐怖がイップスの症状となる筋肉の反応を生み出してしまうので、不安や恐怖を和らげたり、生じることがなくなるようにトレーニングを行っていきます。
イップスが起きる不安や恐怖は、イップスとは何か、イップスの症状が出る時に脳では何が起きているのかなどを知るだけでも和らぐことがあるので、正しい知識を持つだけでも感情を克服できることがあります。
また、不安や恐怖によって体の動きがおかしくならないためのトレーニングもお伝えしています。
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