本当にスポーツは結果が全てなのか

“スポーツは結果が全て”と考えているアスリートや指導者がいますが、私はこの考え方が強いとさまざまな弊害を生んでしまうと思っています。
下記のようなスポーツ界の問題は、“スポーツは結果が全て”という考え方が影響して生じている可能性があると感じています。

  • 過度な練習、パワハラや体罰を生んでしまう。
  • 勝つためにドーピングや不正な道具の使用をする選手がいる。
  • 選手が自分を追い込み心身のバランスを崩してしまう。
  • 結果を出した選手が自分を見失ってしまう。
  • 競技の結果に対する価値観がセカンドキャリアの弊害になる。
  • 子供の頃からスポーツに偏った生活になりすぎる。
  • 子供の頃に選手になれない子どもが競技を嫌いになってしまう。
  • 指導者や親の思いが先行し過ぎて子供の精神的に追い込まれている。
  • 結果が出ない時に、観戦者またはSNSで心ない言葉や態度を浴びせられる。

アスリートからの相談を受けている中でも、上記の内容がテーマになることがありますが、詳しく話を聴いていると背景に“スポーツは結果が全て”という価値観が影響していることも少なくありません。

スポーツの可能性

私は、“スポーツは結果が全て”という発想はスポーツの持つ可能性を小さくしてしまうと考えています。
スポーツで大きな成果を残す、プロとして活躍し続けるということは、名声や金銭的な報酬、達成感などを得ることができる可能性につながります。
だからこそ結果を追い求める人がいて、スポーツをする上でそういう思いが生じる人がいるのは当然のことです。

ただそれ以外の可能性として、スポーツをすることで得られる仲間や指導者との関係性、成功も失敗も含めた体験、課題を克服する経験、自己管理のための意識やノウハウ、などを得ることができます。
その他にも得られるものはあるでしょう。

生きる力をつけるための模擬体験

スポーツは、生きる力をつけるための模擬体験ができる要素が詰まっています。
スポーツを通じて体験できることは、スポーツというものが含む可能性でもあると思うのです。
特に幼少期から学生時代に体験するスポーツはその要素が強く、そこに価値があると思います。

プロのスポーツ選手になり、その世界だけで金銭的な報酬を得て生活していくことができる人はほんの一部です。
スポーツを体験する多くの人は、スポーツ以外のことで報酬を得て生活していくことになります。

多くの人にとっては、成果を出すこと、人との関係性を築いていくこと、成功や失敗の体験を繰り返して成長していくこと、自分の課題を克服していくことなどは、スポーツ以外のことで行っていくことになるため、スポーツはそのためのシミュレーションとなる良い機会です。
そのため、結果のみに価値があるのではなく、それ以上に体験に価値があると思うのです。

教育力を身につける機会

またスポーツの価値の一つに人を教え、導くための指針や方法といった教育力を身につけることができる機会でもあります。

教育力は競技に関する指導だけでなく、生活力、人間関係を築く力、自制心や自立心、倫理感などの向上を促す力です。
この力は、自分が親となり子供を育てること、地域や会社の中で人を導くことなどに必要な力です。
教育力があるということは、社会生活を営む中で価値の高い力です。

自分が競技をしてきた中でも、指導者やメンタルトレーナーとしてスポーツに関わってきた中でもスポーツの価値は、スポーツを体験した人が社会の中で周囲に価値を提供できる人に育つための要素がたくさんあると実感しています。

まとめ

一人の選手が、自分の人生の中で『今は結果を出すことを最重要課題にする』という思いで競技をする時期があってもいいと思います。
その人にとっては、そう感じることがあり、そのために努力をするという体験からは得られるものもたくさんあり、他人が否定できるものではないからです。
しかし、“スポーツは結果が全て”という価値観をスポーツをする多数の人に当てはめることは、スポーツの価値を小さくしてしまうことになると思うのです。

私は、“スポーツは結果が全て”という価値観がもたらす弊害が少なくなって、スポーツが含む他の価値がもっと社会に反映されることが望ましいと思っていて、自分自身の活動も微力でもそれを意識して継続していこうと思っています。

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