試合中の思考がパフォーマンスを左右する

競技生活の中で目的達成を目指して、それを実現するために自分を向上させる計画を考え、目的達成までの過程で生じる課題や葛藤と向き合うために思考することは大切なことですが、スポーツでは思考力をできるだけ弱くする必要が出てくる場面もあります。

その場面とは試合です。
厳密にいうと、試合を含むプレー中のことを指します。
その中でも試合が余計な思考が働きやすい条件が整っています。

その理由は、スポーツには勝敗、成功と失敗という結果が生じるものであるため、無意識に望まない結果にならないために思考を働かせてしまいます。
敗北や失敗を避けるために『~してはいけない』『~しないようにしよう』ということを考えやすい傾向の選手がいます。
上記のような思考は、漠然と敗北や失敗を避けたいという願望であり、具体的にどういうプレーをしようという思考ではありません。

具体的にこのようなプレーをしようという思考は、現実に起こりうる現象を予測して、自分がどう行動するかを決断するための思考であるのに対して、敗北や失敗を避けたいという願望は、望まない結果にならないように、無意識に望まない結果をイメージ化して、回避行動を生み出してしまう思考です。

人間の脳においては、思考したことを行動に移す前に行動の手掛かりとなるイメージが作られます。
このイメージは、自分の意思で具体的に描くことも可能ですが、望まない結果を回避したいという願望から、『~してはいけない』、『~しないようにしよう』という漠然とした不安によって無自覚に描かれてしまうこともあります。

脳内のより深い部分は、言語を理解できない、現実と想像の区別ができないという特徴があるため、試合の中で意識的に勝利や成功を望んでいても、無意識では敗北や失敗をしたくないという思いが強くて『~してはいけない』、『~しないようにしよう』という思考が働いていると、望んでいないことが起こるイメージを作ってしまうため、思考がプレーに悪影響を与えてしまうことがあるのです。
では、プレーに悪影響を与えてしまう可能性がある思考への対処はどのようにすればいいのか、それを説明いたします。

 

試合など緊張を伴う場面での、感情のコントロールの必要性を感じている人は多いと思いますが、思考のコントロールを行うことは感情のコントロールをすることにつながると思って読んで頂ければと思います。

その理由について説明します。

試合前の思考のコントロール

まず試合前の思考のコントロールについてです。
試合において大会の重要度、試合の状況、相手の強さなどが刺激となって試合前にもさまざまな感情が生じます。
興奮、不安、戸惑いなど違いがあっても、刺激によって生じる自体を防ぐことはできないという点は共通しています。

感情のコントロールというと、感情が生じること自体を無くそうと考えている方もおられますが、それは望ましい方法ではありません。
感情をコントロールするというのは、感情をもとに作られる思考パターンをコントロールすることで、感情の影響が自分の判断や動作に影響しないようにすることなのです。

 

具体的に説明すると、試合で負けることが怖いと思った時に怖いという感情から解放されるために『~してはいけない』、『~しないようにしよう』と思い始めると、怖いという感情をもとに生まれた思考が、起きてほしくないことが起きるというイメージを作ってしまうので、その思考パターンに気づいたら別の思考によってイメージを作り直す必要があります。
しかし、試合の中でそんなに簡単に思考を切り換えている暇はないことが多いので、前もってどういう意識を持って試合をするのかを考えておくことが対処方法となります。

もう一つは、競技によってはタイムアウトを取ることができたり、プレーが中断することがあるので、その合間は具体的にどんなプレーするのかという再決断を行うことも可能なので、勝率を上げるためには思考する余裕のある時間を有効的に使うことを意識してほしいと思います。
望ましくない思考パターンが働いていると気づいた時に、別の望ましい思考に切り替え、起きてほしくない願望ではなく、自分をやるべきことが何かを考え、それを行う決断をして下さい。

意思の力によって思考パターンを切り換えることが思考のコントロールです。
意思によって不安や戸惑いのような感情をもとに生まれた思考パターンを止めることが、プレーが感情の影響を受けることを防いでくれるのです。

 

試合中の思考のコントロール

試合前の思考のコントロールは、自分の中で生まれた感情や思考に気づくことで、別の思考を働かせるという方法で行うことができますが、試合中は同じようにはいきません。

試合中でもプレーが止まっている時には、自分がどんなプレーをするのか、どんな作戦で攻めるのかを考えることができますが、プレーを行う直前や最中に脳内で思考が優位になってしまうと目の前の状況に対応したプレーができなくなってしまう可能性があるのです。

多くの競技は、目の前の状況が自分の思考のスピードよりも速く切り替わるので、それをすべて思考で処理してしまうと間に合わないからです。
そして、自分の経験をもとに直観的に判断したことは、経験や実績が豊富なほど正しい傾向があるので、直観を重視することが試合においては大切なので、直感を疑わないように思考をコントロールすることが必要なのです。

試合中の思考のコントロールとは、思考よりも感覚が優位になり、目の前の状況に素早く正確に反応できる心理状態を持続することです。
試合直前、試合中に、脳が環境や状況の変化に適切に反応できるようにしてから試合に臨むことが望ましく、それをサポートするのがメンタルトレーナーの役割でもあるのです。

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